あたらしい門のとびらがひらかれます。不可能を可能にすることもできます。あたらしい日がはじまるのです。そして、もし人がそれに反対するのでなければ、どんなことでもおこりうるのです。

(『ムーミンパパの思い出』トーベ・ヤンセン著 小野寺百合子訳より引用)

 

トーベ・ヤンセンのムーミンシリーズの一冊、『ムーミンパパの思い出』を読み終えました。自由と冒険を愛するムーミンパパの活躍に、愛と孤独を考えさせられました。ヤンセンの、完全懲悪を超えた成熟した人生観を感じ、何度も読み直したい本になりました。

 

●おばけ、トーアップで靴下を編む

この本の中で、編み物愛好者として面白かったのは、登場人物?の中の”おばけ”が手仕事が好きで、編み物をしたり刺繍をしたりしていたことです。どんな刺繍かと言うと、ポットカバーに骸骨の刺繍。なんと今流行りの「スカル」ですよ!

編み物の方は、挿絵もありました。

事件はちっともおこりません。私のおばけは、タイルストーブに近いへやのすみにすわって、えりまきやくつしたをあんでいました。神経質なおばけの気をおちつかせるのには、あみものはいい仕事にちがいありませんよね。

(『ムーミンパパの思い出』トーベ・ヤンセン著 小野寺百合子訳より引用)

 

靴下をつま先側から編んでいますね。やけに長いのでニーハイソックスかな?タイツかな?

今風に言えば、トーアップでソックニッティングと言うのでしょうか?糸が右手側にあるようなので、編み方はアメリカ式(English style)に見えます。針を下から持つ、卓球で言う「ペンホルダー」の針の持ち方。輪針はまだ無い時代だと思うので、当然針は棒針。

それは良いのですが、玉無しの棒針(double point needle)ではなく、玉付きの棒針を使っているように見えます。それじゃ「輪」には編めないから、目が落ちないように玉無しの棒針にキャップを付けて編んでいるのかな?

 

ムーミンシリーズの童話全9冊の4冊を読み終えたところで、編み物が出てきたのはこの1冊のみ。でも、他の本には編物シーンがあるのか、ムーミングッズには編み物のイラストが使われています。

 

●靴下を編むトゥ―ティッキ

こちらは、以前買ったミイのマグカップのパッケージ。トゥ―ティッキ?が同じく靴下を編んでいます。これは明らかにおかしい!2本棒針では「輪」には編めない!!!

 

●マフラーを編むミムラ

私が持っているハンカチでは、ミムラ夫人(着ている上着の模様は、エストニアの模様に見える)がマフラーを編んでいます。こちらも、玉つき2本棒針でアメリカ式(ペンホルダー)。こちらも若干怪しい。編地が一本の棒針、しかも下向きの棒針にしかかかっていない。このままだと、編地が滑り落ちそう(>_<)

 

3点のイラストとも、ディテールがちょっと変。

編み物を実際にする人なら、こうは描かないんじゃないかしら?

 

それでも、ムーミン以外のキャラクター、例えばミッキーとか熊のぷーさんとかだと、こんなに編み物をしている姿を見かけることがありません。そう考えると、これらのイラストを描いた人の周囲には、沢山編物をする人がいて、編み物になじみがあったように想像します。

 

ムーミンシリーズの本の挿絵は、著者であるトーベ・ヤンセン(1914~2001)。彼女自身は編み物をしなかったけれど、ヘルシンキで生まれ、パリやストックホルムで暮らした彼女の周囲には編物をする人にあふれていたに違いありません。

 

童話を書き、絵を描く人の周りに編物をする人がいる・・・

素敵な光景ですね

 

 

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