先日のブログ記事(『トム・ソーヤーの冒険』とテストニット(前篇))の続きです

 

私が2種類あると思っているテストニットの中の一つ、2の編み糸のテストニットについて考えてみます

 

こちらは主に販売開始前の編み糸を、それを使ってその糸に向いていそうな何かを編む人を募って、糸を提供して期日までに編んでもらうものです。完成品は、ずっとテストニットした人の手元に置いておいたまま、SNSで画像とのコメントを紹介する場合と、一旦糸提供者のもとに送ってもらって、どこかで展示して展示期間後にテストニットした人に返却する場合があるようです。

こちらもテストニットの編み工賃は無料なようですが、編物パターンのテストニットと違って、完成品がテストニットした人の手元に残るので、その糸が欲しい糸であれば、欲しい糸をタダでゲット!できてラッキーといったところでしょうか?

 

「ニッターが販売開始前の糸を編ませてもらえるなんてチャンスは、そうそう毎日毎日あるもんだろうかね?」(しつこくトム・ソーヤーを真似て)

 

こちらのテストニットで気になるのは、「その糸がどんな編地・デザイン・作品に向いているかを考えるのは、本来メーカーの仕事じゃないかしら?」ということ

 

例えば、Ravelryである編み糸を使って編んだprojectを検索すると、様々な作品が出てきて、「あぁ、この糸はこういうものに向いているんだな」とわかって、とても参考になります。これを前倒しにして、自ら糸を提供してやってもらっているだけと言えばそうなのでしょうが・・・

ちょっと想像してみてください。もし、日本の毛糸メーカーであるP社が新素材の発売に先立ち同じようにテストニットしてくれる人を募集して、応募した人が『ベストアイズコレクション』に掲載されていたプルオーバーを編んだとしたら・・・R社の糸のテストニットに応募した人が『ヨーロッパの手あみ』に掲載されていたカーディガンを編んだとしたら・・・その作品がどんなに素敵で、その糸に合っていても、どこか違和感がありませんか?

「P社の企画室、何やっているの?!」

「R社、それで良いのか?!」

ついつい、そんなことを考えてしまいそうです。従来からある老舗の国内メーカーの編み糸で考えると違和感があるのに、これが外国製の糸や新規参入のメーカーの編み糸だと何も不思議に感じない。私の頭が固いのかしら?

 

皆さんはどう思われますか?

 

そして編物パターンのテストニットに比べると、ニッター側にメリットが大きそうな編み糸のテストニットですが、これが成り立つかどうかは、その糸(糸の提供者)が「SNS映え」「インスタ映え」するかどうかにかかっているように見えます。承認欲求を満たすことで金銭報酬の替わりにしている・・・と言ったら言い過ぎでしょうか?毛糸卸の業者さんが従来品種の編み糸を使って同じようなテストニット制度をやってみた時は、あまり長続きしなかったようだし(汗)

 

結局のところ、世の中は、それほどつまらなくもないな、とトムは心のうちで思った。彼は、自分でそうと知らなかったが、人間の行為の一大原則を発見していたのだった。・・・・・・それはつまり、大人にでも子どもにでも、なにかをほしがらせようと思ったら、その物を手にはいりにくくしさえすればよい、ということだ。もしもトムが、この本の著者のように、偉大にして、賢い哲学者であったなら、いまや彼は「仕事」とは、人がぜひともしなけらばならないことであり、「遊び」とは、ぜひしなくてもよいことであると、よく理解したことだろう。

(『トム・ソーヤーの冒険』マーク・トウェイン作・大塚勇三訳 福音館古典童話シリーズより)

 

編み物の世界にも、トム・ソーヤーの様に賢く、SNSの特性を理解して上手に利用する人が出てきたのだなと感心しています。まぁ、難しいことはおいておいて、旬の果物で気分をリフレッシュして、まずは手を動かしていきましょうか♪

 


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